DXもAIも、まずは「現在地」を知るところから
- 7月16日
- 読了時間: 8分

こんにちは。GYOMUHACK株式会社のみりです。
最近は、DX、生成AI、AX、SaaS導入など、企業をより良くするための選択肢が本当に増えました。
ここでは、AXをAIトランスフォーメーションという意味で使います。
新しい技術が登場し、それを仕事に取り入れようとすることは、とても良いことだと思っています。
今まで時間がかかっていた仕事が早くなったり、人が判断していたものをAIが支援してくれたり、これまでできなかったことができるようになったりして、技術の進化によって働き方の可能性はどんどん広がっています。
一方で、いろいろな企業の例を見ていると、ツールを選ぶという具体的な行動の前に、もうひとつ考えておきたいことがあります。
それは、「私たちは、自分たちの現在地をどこまで知っているだろう」ということです。
地図に現在地がなければ、ルートは出てこない。
これは、地図アプリに少し似ていると思っています。
目的地を入力して、電車で行くのか、車で行くのか、歩いて行くのかを選ぶ。
けれど、現在地がわからなければ、そこまでのルートは出せません。
会社の業務も同じです。
「AIを使いたい」
「新しいSaaSを導入したい」
「この作業を自動化したい」
という目的があったとしても、今の業務がどのように動いているのかがわからなければ、どこに、どのような技術を使うのがよいのかを判断することが難しくなります。
誰が担当しているのか
何のために行っているのか
どの情報を受け取り、何を次の人に渡しているのか
どこで判断が発生しているのか
どんな例外があるのか
どのシステムやツールを使っているのか
こうしたものを整理し、自分たちの仕事の流れを理解するために必要になるのが、ビジネスプロセスマネジメントです。
ビジネスプロセスマネジメントとは
ビジネスプロセスマネジメント、略してBPM。
少し長くて、難しそうに聞こえますよね。
業務フローを一度書いて終わり、といったものを想像する方もいるかもしれません。
BPMの専門家団体であるABPMPでは、BPMを、業務プロセスを特定し、設計し、実行し、記録し、測定し、継続的に管理するための体系的な取り組みとして整理しています。
目的は、単に業務を早くすることではなく、会社の戦略と日々の仕事をつなぎ、目指す成果を安定して生み出せる状態をつくることです。
つまり、業務フローの図をつくることだけがBPMではありません。
今の業務を知る。
目指したい状態を考える。
変えてみる。
結果を確認する。
そして、また見直す。
この繰り返しを、会社の中で続けられるようにすることが、ビジネスプロセスマネジメントです。
海外では、専門領域として整理されている
海外を見ると、ビジネスプロセスマネジメントやビジネスアナリシスは、誰かが善意で行う仕事ではなく、ひとつの専門領域として整理されています。
業務プロセスを表現するためのBPMNという記法は、技術部門とビジネス部門が共通して理解できる標準としてつくられ、ISOの国際規格にもなっています。
また、IIBAというビジネスアナリシスの国際団体では、ビジネスアナリシスを「役割」であると同時に「専門領域」でもあると位置づけています。
IIBAが2026年に発表した調査では、122か国、2,120人のビジネスアナリシス従事者から回答を集めています。その回答者の81%が、自分の組織ではビジネスアナリシスが正式な役割・能力として認識されていると回答しています。もちろん、世界中のすべての会社で同じように行われている、という意味ではありません。それでも、国をまたいで職能として成立していることはわかります。
英国政府のデジタル人材体系では、ビジネスアナリストについて、研修段階から部門責任者まで6段階の役割が定義されています。
その仕事には、業務上の問題や機会を理解すること、人・組織・プロセス・情報・データ・技術を横断して調査すること、改善案を考え、変化による影響や成功の基準を整理することなどが含まれています。
海外の会社がすべて業務整理を完璧にできている、という話ではありません。
ただ、業務を理解し、変化を設計する仕事に名前がついていて、専門性として育てる仕組みがある。
ここは、とても大きな違いだと思います。
効果を出している企業は、仕事の流れを見直している
では、ビジネスプロセスを整理することで、本当に効果があるのでしょうか。
McKinseyが2025年に行ったAI活用のグローバル調査では、AIによって高い成果を上げている企業は、そうではない企業と比べて、個別の業務フローを根本から再設計している割合が約3倍高いという結果が示されています。
同調査では、ワークフローの意図的な再設計は、AIから実質的なビジネス効果を得るうえで、調査した項目の中でも特に影響の大きい要素のひとつとされています。
さらに2026年7月のMcKinseyの記事では、AIによって営業利益への効果を出している上位企業は、AIツールを選定する前にワークフローを再設計している割合が、ほかの企業の2倍だったと報告されています。組織全体の運営モデルを見直している割合も3倍でした。
ここで大切なのは、「どのAIツールを選んだのか」だけではありません。
その前に、「AIを使って、仕事の流れをどのように変えたいのか」を考えていることです。
また、McKinseyが紹介しているインテリジェント・プロセス・オートメーションの事例では、50〜70%のタスク自動化、20〜35%の年間コスト効率改善、50〜60%の処理時間短縮といった成果が報告されています。
ただし、これは単に自動化ツールを追加した結果ではありません。
McKinseyは、この取り組みを、業務プロセスの根本的な再設計と、RPAや機械学習などの技術を組み合わせるものとして説明しています。個別の技術だけでは十分ではなく、価値を引き出すにはプロセスそのものの再設計が必要だとしています。
ツールが成果を生み出すというより、「業務を理解し、仕事の流れを組み直したところに、適切なツールを置くことで成果が生まれる」ということなのだと思います。
DXもAXも、業務の上に乗っている
DXというと、新しいシステムへの入れ替えや、紙のデジタル化を想像することがあります。
しかし、本来のDXは、技術を使って組織の動き方そのものを変え、継続的に価値を生み出せるようにする取り組みです。
McKinseyも、DXでは個別のユースケースだけを見るのではなく、顧客体験や業務プロセス、機能といった、ひとまとまりの領域全体を変えることが重要だとしています。
また、デジタルソリューションの開発に1ドル使うなら、業務プロセスの変更、利用者の教育、変化を定着させるための取り組みに、少なくとももう1ドルを見込むべきだとしています。
AIも同じです。
AIは、とても多くのことができます。
文章をつくる
情報を探す
データをまとめる
問い合わせに答える
判断を支援する
けれど、会社の中で誰が、何のために、どんな情報を使い、どのような基準で判断しているのかが整理されていなければ、AIをどこに組み込むべきかは決められません。
AIに会社の仕事を理解してもらうためには、まず私たち自身が、自分たちの仕事を説明できる必要があります。
現在地を知ることは、今を否定することではない
業務を可視化する、現状を整理する、と聞くと、
「無駄な仕事を探されるのではないか」
「今のやり方を否定されるのではないか」
と、少し身構えてしまう人もいるかもしれません。
でも、私はそういうものではないと思っています。
今ある業務は、誰かが困らないように考えた結果だったり、過去に発生したミスを防ぐためにつくられたものだったり、顧客ごとの事情に対応するために変化してきたものだったりします。
一見すると手間に見える確認作業にも、品質を守る役割があるかもしれません。
部署ごとに違うやり方にも、それぞれの事情や目的があるかもしれません。
だから、最初から正解を決めて、ひとつのやり方にそろえる必要はありません。
まずは、なぜこの業務があるのかを知る。
違いがあるなら、その違いが生まれた理由を知る。
そのうえで、
残したほうがよいもの
変えたほうがよいもの
ツールに任せられるもの
AIが支援できるもの
人が判断し続けたほうがよいもの
それぞれを選んでいけばよいのだと思います。
業務の最大化は、業務の理解から始まる
業務改善という言葉からは、無駄を減らすことや、時間を短くすることが注目されがちです。
もちろん、それも大切です。
ただ、業務には、効率だけでは測れない価値もあります。
顧客を安心させること
事故を防ぐこと
知識を次の人に渡すこと
複数の部署が協力できる状態をつくること
働く人が、自分の仕事の目的を理解できること
こうした価値まで含めて、業務の力を最大化していく。
そのためには、自分たちの仕事を見える状態にし、組織の中で共有できるようにすることが必要です。
BIZPROCEが目指しているのも、単に業務を減らしたり、人を管理したりすることではありません。
一人ひとりの頭の中にある業務を、ほかの人にも伝えられる形にすること
部署をまたぐ仕事の流れを、同じ地図の上で見られるようにすること
ツールを導入する前にも、導入した後にも、私たちがどこにいて、どこへ向かっているのかを確認できるようにすること
そうやって、業務を通じて人と人が理解しあえる状態をつくりたいと考えています。
おわりに
DXを進めたい
AIを使いたい
新しいツールを導入したい
そう思ったとき、いきなり製品の比較表をつくるのではなく、まずは現在の業務を見てみてください。
この業務は、何のためにあるのか
誰が関わっているのか
どんな情報が必要なのか
どこで判断しているのか
どこにつながっているのか
そこまで見えてくると、次に何をすればよいのかも、少しずつ見えてきます。
現在地を知ることは、今の仕事を否定することではありません。
今まで積み重ねてきた仕事を理解し、次の変化につなげることです。
新しい技術を、人と会社の力を最大化するために使う。
その土台として、ビジネスプロセスマネジメントをもっと身近なものにしていきたいです。
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